
この記事では、DTM初心者の方向けに、ミキシングの基本事項や気を付けたいポイントを共有します。
ぜひご参考にしてみてください。
はじめに
DTM初心者の方は、ある段階で「ミキシング」という言葉に出会い、どのようなものなのか、やったほうがいいのかなどと疑問に思うはずです。
筆者も、DTMを始めたころはミキシングを全く行っていませんでした。
しかし、ミキシングを行うようになってからは、ミキシングは楽曲のクオリティーを左右する必須の工程であるということを実感しました。
筆者もまだまだ勉強中の身ですが、これまでのミキシングの学習や実践を通じて、いろいろと分かったことや反省点などがあります。
この記事では、そのような筆者の経験に基づき、ミキシングの基本事項や、ミキシングで気を付けたいポイントを共有します。
ぜひご参考にしてみてください。
ミキシングの概要
ミキシングとは、楽曲を構成する各トラックの音量バランスやステレオ上の定位、サウンドの調整を行うことで、楽曲の聴きやすさやクオリティーを向上させる工程を指します。
その名の通り、バランスの取れた一つの楽曲としてミックスする(混ぜ合わせる)工程と言えます。
ミキシングには正解がなく、自分が理想とするサウンドを実現することが大切です。
ミキシングにおける各種調整作業の意味を理解し、目的が明確になれば、求めるサウンドを実現しやすくなるでしょう。
ミキシングの基本的な調整項目
ここでは、ミキシングにおける基本的な調整項目を見ていきます。
音量
おそらく最優先となるのが、音量の調整です。
各トラック間の音量バランスを整えて、楽曲全体が聴きやすくなるように最適化します。
例えば以下のことを考慮して、最適な音量バランスを考えましょう。
- メロディと他のパートの音量バランスはどのくらいが良いのか
- リアルな演奏を考えた場合、どのくらいの音量バランスにするのが自然なのか
パン
パンは、トラックのステレオ上の左右の定位を決めるパラメーターです。
言い換えると、そのトラックの音をスピーカーやヘッドフォンのどのくらい右(あるいはどのくらい左)から鳴らすのか、を決めるパラメーターです。
例えば、バンドやオーケストラで演奏する際の楽器配置をイメージしてください。
すべてのパートが中央で演奏するのではなく、左右・中央に均等に分かれていることが想像できるかと思います。
パンの調整は、そのように各パート(トラック)の水平的な配置を決める工程と言えます。
これにより、楽曲に左右の広がりが生まれ、パート同士の音のぶつかりを避けることで、聴きやすさが向上する効果もあります。
なお、パンを調整することを「パンを振る」や「パンニング」などとも呼びます。
リバーブ
リバーブは、トラックの音に残響を付加するエフェクトです。
リバーブの設定次第で、音の奥行き感や、どのくらいのサイズの空間で演奏しているのかなど、楽曲の立体感を自由に調整することができます。
例えば、ある空間をシミュレートしたリバーブを全トラック共通で適用することで、楽曲が特定の空間内で演奏されているような統一感を出すことができます。
また、トラックごとに個別のリバーブをかけて、サウンドの響きや存在感を調整することもあります。
残響によって楽曲全体がぼやけるなどの問題がある場合は、リバーブのタイプを見直してみたり、リバーブのかかり具合や残響音の特性を決めるパラメーターを調整していきます。
EQ
どんな楽器や声であっても、低周波から高周波まで、様々な周波数の音が大なり小なり含まれています。
例えば、ヴァイオリンなどの高音の楽器の音色にも、僅かであっても低周波の音(低音)が含まれています。
EQ(イコライザー)は、各トラックの音を周波数レベルで調整するツールです。
複数のトラックの音が一緒に鳴っているとき、共通の周波数帯が重なることで干渉しあい、全体に不明瞭に聞こえてしまうことがあります。
そのような時、EQを使って特定の周波数帯をカットすることで、本来聞かせたい音をクリアにすることができます。
例えば、キック(バスドラム)の低音がクリアに聞こえるように、その他のトラックの低周波数帯をカットする、などの例があります。
また、トラック同士の干渉を防ぐだけでなく、音色や音質を調整する目的でもEQは使われます。
例えば、ストリングスの高音成分を目立たせて明るい感じにしたいときに、高周波数帯をブーストする(引き上げる)、といった具合です。
コンプレッサー
コンプレッサーは、その名の通り音を圧縮してダイナミクスをコントロールするツールです。
コンプレッサーの適切な設定を行えば、音の迫力や存在感を増す効果が得られます。
特に、ドラムの迫力を増す際などに重宝されますが、その他のトラックにも適宜使用します。
コンプレッサーの基本的な仕組みは、あるレベルを超えた音量を圧縮して抑え込むことです。
通常、以下のようなパラメーターを微調整できます。
パラメーター | 内容 |
---|---|
スレッショルド | 音量がどのレベルを超えた時に圧縮するのか |
レシオ | どのくらいの強さ(比率)で圧縮するのか |
アタック | どのくらい時間をかけて圧縮するのか |
リリース | 圧縮の効果をどのくらい持続させるのか |
上記の設定がうまくいっていないと、不自然なタイミングで音量が変化するなど、期待しない結果になってしまいます。
また、コンプレッサーをかけすぎると、本来音楽的に必要な抑揚まで失われるリスクもあるため、適切な設定を探ることが大切です。
ミキシングで気を付けたいポイント
ここでは、筆者のこれまでの反省をもとに、ミキシング作業するうえで気を付けたいポイントを共有します。
ミキシングは万能ではない
ミキシングは楽曲のクオリティーを高める重要な工程です。
しかし、楽曲における問題をすべてミキシングで解決できるわけではありません。
例えば和音の配置など、アレンジの段階で問題があるのであれば、ミキシングであれこれ設定を調整しても問題は解決できません。
そのような場合はアレンジを再検討し、打ち込みから修正する必要があります。
目的のない調整はしない
極論、音量とパンの調整だけでも、ミキシングを行ったことにはなると思っています。
その時点でもし、ほかの項目を調整する必要がないくらいに楽曲が理想的なものになっているのであれば、そこで「ミキシング終了」で良いはずです。
大切なのは、調整する必要のない項目をむやみに調整しようとしないことです。
筆者も、むやみにいろんな項目をいじって泥沼にはまったり、意図しない結果になってしまった苦い経験があります。
何を改善するためにその項目を調整したいのか、目的を常に考えてみましょう。
様々な再生環境で確認する
例えば、あるモニタースピーカーを使ってミキシングを行い、「いい感じになった」と思ったとします。
しかし、同じ楽曲をスマホのスピーカーやイヤフォン、ヘッドフォンで聴いてみると、バランスが悪かったり、音が割れている、なんてこともよくあります。
再生環境が違えば、楽曲の聞こえ方にはどうしても違いが出ます。
このため、ミキシングの際は、できるだけいろんな出力機器で楽曲を再生し、聞こえ方を確認するほうが望ましいです。
そうすることで、どのような再生環境でもある程度バランスの取れた聴きやすい楽曲に仕上げることができます。
ちなみに、制作中の楽曲をスマホのスピーカーで確認するのに便利なアプリなどもあります。
こちらの記事で紹介していますので、よろしければご参照ください。
休み休みやる
筆者はミキシング作業にはまると、ついつい一気に終わらせたくなってしまうのですが、これはあまりよくありません。
短期集中でミキシングを終わらせた楽曲は、結局後になって気に入らない(直したい)点がいろいろ見つかる傾向があります。
一般的に、ミキシング作業を休みなく行っていると、だんだんと耳が楽曲に慣れてしまったりして、フラットな感覚で聴くことが難しくなります。
こうなると正常な判断ができず、結局理想のミキシングから遠ざかってしまう恐れがあります。
短時間で完璧に仕上げようとせず、数時間や数日など、適度に時間を置きながら休み休み進めていくほうが、良い結果を期待できます。
時間を置くことで、耳がリフレッシュされた状態で改めて楽曲を聴くことができ、改善点を見つけやすくなるはずです。
視覚的・数値的にも分析する
楽曲を視覚的・数値的に分析できるツールを用いることで、客観的な情報が得られます。
時としてそのような情報が、ミキシングにおける問題解決に役立ちます。
例えばDAW「Studio One」には、以下のような分析用プラグインが付属しています。
プラグイン名 | 分析対象 |
---|---|
Level Meter | 音量の瞬間的なピーク、ラウドネスなど |
Phase Meter | ステレオにおける左右の広がりなど |
Spectrum Meter | 周波数成分のバランス |
もっとも、視覚的・数値的なものだけにこだわるのも本末転倒になりかねません。
音楽のすべてをそのような情報だけで表すことはできません。
最終的には自分の耳でチェックすることが大切だと思います。
参考曲との差を分析する
ミキシングのお手本となる参考曲(リファレンス)を用意することも有効です。
参考曲がどのような音作りをしているか、どのような音量バランスになっているかなど、自分の楽曲との差を比較し、改善点を検討してみましょう。
独自のサウンドを追求するのも素晴らしいことですが、自分が理想とする楽曲があるのであれば、それを参考にすることで基準を見失わなずに済みます。
本紹介
最後に、ミキシングの基礎を実践的に学べるおすすめの本を紹介します。
DAWミックス/マスタリング基礎大全
この本では、ミキシングにおける各種調整項目の基本知識や、エフェクトの具体的な使用方法・テクニックを学ぶことができます。
また、ヴォーカル、ギター、ベース、ドラム、ストリングスなどの、バンド系楽曲を構成する各種トラックを教材データとして、DAW上でミキシングを実践できる演習課題も用意されています。
さらに、ミキシング後の楽曲の仕上げ作業となるマスタリングについても同時に解説されています。
まとめ
ミキシングは最初とっつきにくい作業かもしれませんが、実践しながら徐々に感覚を養うことが大切だと思います。
目的を明確にしたうえで、理想のサウンドを追求していっていただければと思います。
この記事が参考になれば幸いです。