この記事では、DTMのためのパソコン選びに必要な、ストレージの基本知識を解説します。
ぜひご参考にしてみてください。
はじめに
DTMを始めるにあたり、パソコン選びは重要なステップです。
今回は、パソコンのデータを保管する「倉庫」の役割を持つ、ストレージ(SSDとHDD)について解説します。
DTMにおいて、どのストレージに何のデータを保管するかは、データの読み込みや処理の速度に影響を与えます。
ストレージの種類について知り、適切なストレージを選べるようになれば、作業の効率が大幅に向上します。
ぜひこの記事を参考にしていただけたらと思います。
ストレージとは
ストレージとは、パソコンにおけるデータを保存する場所を意味します。
ストレージには、パソコンのシステム、アプリケーション、ユーザーが作成したファイルなどあらゆるデータが保存されます。
ストレージの種類として、主に内蔵(内部)ストレージ、外付け(外部)ストレージ、オンラインストレージがあります。
SSDとHDD
SSD
SSD(Solid State Drive)は、HDDよりも高速な読み書き速度を持つストレージです。
SSDを使うことで、起動時間やアプリケーション・データの読み込みが速くなります。
ただし、HDDよりも価格が高いというデメリットもあります。
SSDの種類
SSDには、主に2.5インチ、mSATA、M.2という3種類があり、形状やサイズ、接続の規格に違いがあります。
2.5インチ
2.5インチSSDは、SATA(Serial ATA)という接続規格を使用しており、SSDの中では比較的読み書き速度が遅めのSSDです。
ただ、HDDと比べれば高速で、ほかのSSDよりは価格を抑えられるというメリットがあります。
mSATA
mSATA SSDは、mSATA(mini-SATA)という接続規格を使用するSSDです。
2.5インチSSDよりもサイズが小型ですが、読み書き速度に大きな差はありません。
M.2
M.2 SSDは、SSDの中でも一番新しい規格です。
mSATA SSDの後継として開発され、こちらも小型のSSDです。
接続規格は、2.5インチSSDと同様にSATAが用いられているものもありますが、PCIe(Peripheral Component Interconnect Express)という規格が用いられているものもあります。
このPCIeという規格を用いたものが、SSDの中でも特に読み書き速度が高速です。
さらにPCIe接続の中でも、NVMe(Non-Volatile Memory Express)という転送プロトコルを用いたSSDが、特に高速なタイプとなります。
簡単に言うと、SSDの中でも特に読み書き速度が高速のものを使いたい場合は、「NVMe」と書かれたM.2 SSDを選ぶことになります。
ただ、高性能な分価格は高く、また発熱しやすいなどのデメリットもあります。
HDD
HDD(Hard Disk Drive)は、回転する円盤に磁気を用いてデータを記録するタイプのストレージです。
SSDと比べると、容量のわりに安価で入手できるというメリットがありますが、読み書き速度が遅いというデメリットもあります。
また、その構造上、物理的な衝撃に弱く、故障しやすいというリスクもあります。
ストレージのスペック
容量
まずは、ストレージにどのくらいの量のデータを保存できるかという、容量の確認が必要です。
単位は、データ量の単位であるGB(ギガバイト)やTB(テラバイト)で表されます。
注意点は、表示されている数字よりも実際に使用できる容量は少し少なくなる場合があるということです。
例えば「1TB」と表記されている場合、実際に使用可能な容量は「0.91TB」などとなります。
多くのメーカーは、バイト数の単位を「1000」ごとに変換(例:1000B⇒1KBに変換)して表記しています。
一方、コンピューターにおけるバイト数の単位は、正確には「1024」ごとに変換(例:1024B⇒1KBに変換)されるため、このような誤差が生じるのです。
読み込み/書き込み速度
ストレージがどのくらいの速さで読み込みや書き込みを行えるかの確認も重要です。
単位はMB/sで、1秒間に何MB(メガバイト)のデータを転送できるかを表します。
製品によって、読み込みや書き込みの速度に違いがあります。
HDDの回転数
HDDには、回転数という項目があります。
これは、データの読み書きを行っている円盤部分が回転する速さのことです。
単位はrpmで、1分間に何回転するかを表します。
一般的に、rpmの値が大きいほど、読み書き速度は速くなります。
PCIeのGen
M.2 SSDの説明で、PCIeという接続規格が登場しました。
このPCIeについて、よく「PCIe Gen4」というような表記がされています。
この「Gen4」の部分は世代の数字を表し、数字が大きいほど、転送速度が高速な新しい規格となります。
外付けストレージ
まずは、パソコン内部に搭載される内蔵ストレージの構成を考えることが重要です。
これに加え、パソコンの外から接続して使用する外付けストレージも、必要に応じて使用を考えても良いでしょう。
外付けストレージのメリットとして、必要に応じて容量を追加できる柔軟性があります。
また、取り外しが容易で、複数のデバイスで利用したり、パソコン内部に問題が生じた時に備えたバックアップ用として使うこともできます。
オンラインストレージ
オンラインストレージは、オンライン上で利用できるストレージのことです。
AppleのiCloud、GoogleのGoogleドライブ、MicrosoftのOne Driveなどがあり、クラウドサービスとして利用する形が一般的です。
ストレージのハードウェアを自分で管理する必要がないという点で、安全面のメリットがあります。
しかし、使用できる容量は数GBや数十GBなど基本的に少なく、容量を増やしたい場合はサービス提供者に追加料金を支払う必要がある場合が多いです。
とはいえ、特定の大事なデータや、複数のデバイスで共有したいデータを保存するなど、使い方を工夫すれば大変便利なものとなるでしょう。
ストレージ構成の考え方
ここでは、DTMにおいてSSDとHDDをそれぞれどのような用途で使うのが適切か、ということについて説明します。
人によって見解が異なる部分もありますが、おおむね共通している部分を中心に説明したいと思います。
SSDの用途
高速な読み書きが必要なデータは、SSDに保存することをおすすめします。
まず、Cドライブ(システム用ドライブ)をSSDに割り当て、以下のものを保存すると良いと思います。
- DAW
- プラグイン
- その他のアプリケーション(DTM以外のものも含む)
Cドライブの容量の目安として、200GB以上は確保したいところです(筆者は250GBを確保しています)。
音源ライブラリも高速な読み込みが必要な場合が多いので、SSDへの保存がおすすめですが、Cドライブとは別のドライブで管理するほうが良いと思います。
Cドライブ(OSなどのシステムと同じ場所)に保存すると、以下のようなリスクがあります。
- 音源ライブラリは大容量であることが多く、Cドライブの容量を圧迫し、システムの動作を重くする可能性がある
- システムに問題が発生した際にCドライブの初期化が必要となり、音源ライブラリも再インストールしなければならなくなる場合がある
ちなみに、SSDを1つしか用意できない場合でも、「パーティション分割」という設定を行えば、「Cドライブ|Eドライブ」というように、複数のドライブに分割して使用することができます。
この設定を使えば、Cドライブに必要な容量だけ割り当て、残りを別のドライブとして使うということができます。
パーティション分割はWindowsの設定から比較的簡単にできますが、設定方法をよく確認の上、慎重に行いましょう。
HDDの用途
Cドライブとは別に管理したいデータ、かつ多少読み込みが遅くても問題ないデータは、HDDに保存しても良いでしょう。
例えば、以下のようなデータが考えられます。
- 完成したプロジェクト
- 作成した楽曲
- 参考音源
また、バックアップ用として、大容量の外付けHDDを使用する人も多いです。
まとめ
DTM用のパソコンを選ぶ際には、ストレージの種類と容量を適切に選ぶことが重要です。
SSDとHDDそれぞれの特徴を理解し、用途に応じた最適な構成を考えることで、快適なDTM環境を実現できます。
この記事が参考になれば幸いです。